Life感想戦「"楽しくやろう"というけれど...」
・山内祐平さん(東京大学大学院准教授)
【エッセイ】"楽しくやろう"というけれど...
・常見陽平さん(作家・大学講師)
「楽しくやろう」というけれど...冷静と情熱の間で仕事する
・海猫沢めろんさん(小説家)
Life感想戦「"楽しくやろう"というけれど...」
・SDMさん(リスナー) No Longer Human
ピンポン(松本大洋)に見る「楽しむ」ということ。
・長野太一さん(リスナー) MIJINKO-LOG
撃沈!!文化系トークラジオLIFEに初メールするも、一切触れられなかった・・・
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プレスラボの宮崎智之です。
今月でひとまずプレスラボのスポンサードは終了してしまいますが、
3か月間スポンサーとして関わらせていただいたいたことは、
長年のLifeリスナーの私にとって夢のような時間であり、
とても有意義な体験をさせていただくことができました。
本当にありがとうございました。
さて、今回のテーマである「"楽しくやろう"というけれど...」ですが、
編集プロダクションに勤める私にとって、身につまされるお題です。
世間一般では、編プロ勤務は「ブラック」の部類に入る職種であり、
実際、私が大学生の時も「出版社の下請けで締め切りが厳しく、
とにかく長時間労働」というイメージから就職先の候補にまったく
入っていなかったと記憶しています。
「実際に勤務してみると、実はそうでもなかった」と言いたいところ
ですが、やっぱり大きな案件を抱えている時期には徹夜を余儀なく
されることもありますし、連載という形で自分の意見を発表させて
いただくこともあれば、ただひたすらに単純作業をこなさなければ
いけない仕事もたくさんあります。
そんななか、楽しく仕事をしていくためには、山内先生の仰っていた
「フロー状態」をいかに保かが重要で、それができるかどうかが
編プロでやっていけるかどうかに大きく関わってくる資質なんですね。
昨今では、「やりがいの搾取」という言葉が自己啓発的な風潮を
批判する形で使われています。しかし、搾取されようがなんだろうが
即席でもいいから"やりがい"を見出せなければ、迫り来る締め切りに
対してすぐに心が折れてしまう訳で......。
楽しくやろうとは思いながらも、そうした瞬発的にモチベーションを
上げる技術がないと、とてもじゃないけどやっていけない現状が
現場のライターにはあるんです。これはなにも編プロだけに限ったこと
ではなく、「楽しい」と思い込まなければ乗り越えられない局面に
直面することは、どの職業の方にも共通することなのではないでしょうか。
そういう意味では、目の前の仕事を切り抜けるために「楽しさ」を手段化
せざるを得ない悲しい状況が、日本の労働環境には確かにあると思うんです
(だから飲食業などでは、過剰な自己啓発を社員教育に取り込んでいるの
では、と思ってみたり......)。
ただ、それでも自分の書いた原稿を読者の方に読んでもらえることは、
大きなモチベーションになります。手前味噌にはなってしまうものの、
社員が5人の小さな編プロでありながらLifeのスポンサーになることを社長が
決断したことでも分かるとおり(スポンサーになることで、僕のボーナスは
カットされましたが笑)、プレスラボは比較的、仕事の自由度が高く、
個人の個性を尊重する会社であることも、自分のなかではモチベーションを
保つことに繋がっています。
3か月のスポンサードが終了する回をスタジオで聞かせていただきながら
感じたことは、今後もっともっと稼いでLifeのスポンサーに返り咲くことが、
仕事の楽しさを持続する糧になるということです。Lifeのゲスト席に座れる
ほどの一人前のライターになるという個人的な目標を定められたことも、
仕事を楽しく行えるモチベーションでもあります(それ自体が、若干、
自己啓発的ではありますが笑)。放送でも話が出ていましたが、
具体的な目標を設定することはやっぱり重要ですね。
いつか、リスナーの方の前にカムバックすることを目標に、日々精進したい
と思う次第です。これからもLifeを応援し続けます! 3か月間、本当に
ありがとうございました。
プレスラボ ライター 宮崎智之
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ライオン 目黒区 古書店主
「"楽しくやろう"というけれど...」というテーマを放送前に聞いた時は、
LIFEで何度か話題になっている他のテーマのまとめ的な回になるのかな、
と思って聞き始めていました。具体的に言えば、「ゲーミフィケーション」とか
「理想のリーダー、リーダーの理想」 、「『働く』ということ、「理想の職場」
そして「動員と革命」あたりを総括したものかと。
実際聞くと、チャーリーが戻って来たことも影響してか、復習部分もあったけど、
また違った新しい切り口や問題が出てきて、ためになる放送でした。
一番共感できたのは、西森さんの話していた「当り前の仕事(事務仕事)を
きちんとやる、ことへの評価」という話です。
自分はベンチャーと老舗中小に努めたことがありますが、ベンチャーでは
もちろんのこと、老舗中小企業でも「事務仕事」に対する評価が低かったです。
友人などと話をすると、特にワンマン社長とかカリスマリーダーがいる会社に
その傾向が多いみたいで、事務仕事なんてできて当り前」「みんなオレの
ように何でもできるでしょ」オレ=○な評価をしている。
本当は、会社の中には、「仕事は生きるためにすること」だと割り切ってる
(たい)人もいるはずなのに、ワンマン社長は「みんなで会社を大きくするぞ」
という思いが強すぎるのか、事務仕事を軽視してしまい、評価がされない
という風潮があると思う。ブラック企業といわれる企業の中にも、そういう
評価軸をもっているため、残業代を払わないことが当り前になっているのかなと。
中には、「残業代いらないっす!社長についていきます!会社大きくしたいです」
みたいな師弟関係に憧れてか、割り切る人もいる(自分)。
けど、会社が大きくなるにつれて、きっちり事務仕事をする人も必要だし、
その中には、「会社の成長なんて興味はない」「言われたことはやるけど」
「生活のためだし」という人もいる。僕は、その感覚のミスマッチが楽しく
仕事ができない原因なのではと、最近思うようになりました。
他にもいろいろ話題があって、どれにも言及したいテーマですが、
長いので割愛いたします。
「ゲーミフィケーション」 の話は出てきましたね。Lifeで取り上げたあと
(だいたい同時期に)いろいろな媒体で紹介されてました。
あと、「やりがい搾取」という言葉。これは口癖になってます。
他方、ん?っと思ったことが1つ、チャーリーさんの言ってた
「会社の行事に参加したい、という人が増えている」という所。
統計とかで増えているのなら、世間一般ではそうなのかもしれないですが、
僕の周り(東京勤務、従業員規模100名以下の数社)には、あまりその傾向は
ないなーと言うのが、正直な感想でした。みんなイベントとかの準備まで
手回らないし、それも評価に響きそうだし、とやりたがらない印象です。
その一方、会社はイベントを増やしていることは事実だと。採用のための
ブログとかSNSで、うちはイベント多いですよ、アピール用ですかね・・・。
あ、社長や上司参加の有無で変わる傾向はあるはずです。
と、まあ今回も今日的な"問い"をいろいろと明確にされた回だったです。
これを元に、それぞれが答えを考え続けることも、Life
をより価値あるものにすることだと思っています。またに"答え"の回をやっても
面白いのではないでしょうか。そからきっと新しい"問い"が生まれて・・・
次回は、がらっと変わるのか、それとも・・・ 相変わらず放送が楽しみです。
PS:いつか絶対、スポンサーになりますよ!(意地)
もし、お手伝いできることがあれば協力させてください。
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おかべ 愛媛県
8月の文化系トークラジオ「"楽しくやろう"というけれど...」を聴いて、チャーリーさんが、「インセンティブとモチベーション」の話をされていて、ここ半年の自分の働き方を振り返って書かせてもらえればと思います。
僕は、この4月で社会人になって16年になるのですが、この16年間上司は増えても、部下はいないという状況で、部下を指導するだの、育てるだのといったことがなかったのです。ところが、この4月、長年事務職としてがんばっていただいた方が退職することとなり、新入社員の女の子が入ってきたのですが、年齢が20歳も離れており正直どうやって指導していけばいいか、彼女にどうやってモチベーションを持たせて、"楽しく"仕事をしてもらうかをいろいろ考えてやっているのですが、なかなかうまくいってないのが実情です。
自分の職種は、官公庁をお客様にしている営業職で、この10年経済状況の悪化によって、売り上げは大幅に下がり、なかなか厳しい状況なのです。当然、インセンティブとしての給料はバブル時のような額は出せない状況なのです。で、給料を上げるためにがんばるという、モチベーションを部下に持たせることはできず、何か他のインセンティブが必要となっているわけです。
おまけにうちの部署の組織体型は、逆ピラミット型で、上司が10人近くいるし、中間管理職の自分を飛び越えて直接上司からその新人の女の子に指示がいっちゃうという状況で、私が指示したことと、上司が指示したことが少し違っちゃうと困った状況になってしまうんです。もちろん、自分が部下に指示する時は、上司と相談して指示内容を決めてから行うのですが、言うことがその場の状況で変えちゃう上司たちなので、ほんとにその板挟みになっちゃっている状況なのです。先日もこの状況になってしまい、部下に「ちゃんと上司と調整してください」と怒られる始末です。いや、まったくその通りなんですけど、その仕事をやる意味をちゃんと説明できない自分もなさけないです。
3月のテーマ「理想の職場」の中で、常見さんと柳瀬さんがおっしゃられていた「仕事は断らない きた仕事はすべて受ける」というのに改めて自分の考え方は間違っていなかったのだなと思ったところなのですが、それが同じような仕事内容(資料作成等)で、指示した人が複数いて、指示の内容が少し違っていても、自分に振られた仕事は"断らない"という考えがあるので、うまく両方を取り入れた資料を作り、両者に納得してもらうということで、"楽しい"という感じていたのですが、これは、僕の考え方であって、それを部下わかってもらうのはとても難しいことなのだなぁと思っています。
部下がいなくて、自分でなんでもやっていた時は、自分が"楽しい"という状況を勝手に作れば良かったのですが、部下が"楽しい"という気持ちを感じられるようにするためにはどうしたらいいのか、番組後半でも柳瀬さんが、新入社員の雇用が減って、中間社員が部下を教育するという機会が失われている状況が問題と語られていましたが、まさにその状況で自分が当事者になると、日々楽しくないです。
チャーリーが本編の最後に、若い人に与えることは"承認"してあげることではなくて、"自信"を持ってもらうことだという話に希望を見いだした感じです。
よい番組ありがとうございました。9月の放送も楽しみにしております。
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鶴賀太郎 グアム在住
http://mywifescamera.blogspot.jp/2012/09/life.html
さて今回は奇しくも私がcharlieに突っかかる形で始まりました。
charlieがOAで話したことは正直いってわかったような、わからなかったような感じだったので改めて予告編も聞いてみました。
最初に予告編を聞いたときは「ゲーミフィケーション」の話かと思っていたのですが、改めて聞いてみると「モチベーションとその内発性」ということがテーマだったのですね。
さてその前提で私とcharlieのアスリート話の齟齬は「モチベーション」という言葉にキーがあったのだと思います。私は「アスリートのモチベーションは内発的に決まってんじゃねえか」と毒づきました。
それに対し本編を聴くとcharlieはどうも同じモチベーションでもcheer up とかself motivating というコンテクストで話をしようとしていたようです。
これでは話が噛み合いません。焚き火に喩えるなら、charlieの話していたモチベーションは着火剤で、私の話していたものは薪そのものです。
着火剤は言葉を換えればアドレナリンといってもいいかも知れません。
これはもちろんアスリートにとっても大事です。試合前に自分を奮い立たせることは普通に行われます。代表的なところでは「ロッキーのテーマ」を聴いたりとか(古いか)。
でもトップアスリートにはそういうアドレナリン的なものとは別に強い内発的モチベーションがあるというのが私が言いたいことでした。
逆にそういう内発的なものがない人は着火剤を点け続けなければいけないのかも知れません。常に自らを奮い立たせ続ける様子は痛々しさを伴うというところから「"楽しくやろう"というけれど...」という匙加減のテーマになったのでしょう。
ただ正直いうとこの「楽しい」というタイトルと予告編の内容から今回のテーマを読み取ることはかなり難しいと思います。これは「楽しい」という言葉がきわめて解釈に幅があるからかも知れません。
このことをアスリートの話とからめてとても納得いく形でお話してくださったのが柳瀬さんのkiller's instinctの話でした。あの話は私が見て来たアスリート(といってもマイナースポーツのトップアスリートですが)の印象と完全に一致していて得心できました。
ところで内発的モチベーションではないself motivateの話の流れででた速水さんのオーバーラップは個人的に完全にツボでした。1950年代からの潜在能力開発話からベトナム戦争へ兵士を送りこむためのニューサイエンス云々のくだりです。
「アメリカンビューティー」でケビン・スペイシーの奥さん役の人が不動産販売をする前に「私にはできる」というような自己暗示をかけ、人工的な笑顔をつくったりするようにしていたようなシーンをアメリカの映画などではときどき見かけることがあります。
ここで面白いのは、こういうself motivationが作品でカリカチュアに描かれるとき、たいがい金髪美女がその役を担うということです。ドラマ「Glee」でWill先生の奥さんのTerriもそうでした。
これは2月の「アメリカ西海岸」特集にまさに直結する話で、ニューサイエンス・ニューエイジ=西海岸=金髪美女というコンテクスト上にあるのでしょう。速水さんの解説でこのことに気づくことができたのは楽しい発見でした。
さて後半で私が小さい頃に母親の言葉に傷ついたというメールを読んで頂きましたが、そのメールが読まれたときtwitter上で私が使った「謙譲」という言葉に対し、「それをいうなら卑下だろう」と突っ込まれた方がいらっしゃいましたが、その通りです。お恥ずかしい。
その流れから山内先生が教育のことについてお話をされていましたが、このシークエンスに限らず山内先生のお話はどれも面白かったです。また是非出演して欲しいです。
最後に今回のテーマ設定にも通ずるのですが、最近charlieが社会学者という枠をでて次世代を育てる教育者の側面が強くなっているように感じられます。
そういう意味でも最後の「与えなくちゃいけなかったのは承認じゃなくて自信なんだ」というくだりはよかったです。ちょっと感動的でさえありました。
蛇足ですが、「えっ、私の年収安すぎる!?」は笑えました。
私のLife感想戦デビュー戦は以上です。