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2010年8月 アーカイブ

2010年8月 1日

2010年7月25日「Life 夏の1冊」Part5

 DSCF1611.JPG DSCF1588.JPG
   ◆「夏への扉」を読み返した速水さん   ◆今日のカトキチタイムはオクラうどんとモダン焼


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○引き続き、パーソナリティとゲストの「夏の一冊」
・ミシェル・レリス『幻のアフリカ』(佐々木)
→マイクル・コーニイ『ハローサマー、グッドバイ』
→「ひと夏の」「終わらない夏」というキーワード
→パヴェーゼ『美しい夏』(佐々木)
・凝縮された短編集『レンブラントの帽子』(森山)
→良くないわけがない一冊です(森山)
・織田作之助『夫婦善哉』(澁谷)
→読むだけで汗をかく。五感にくる小説(澁谷)
・『めす豚ものがたり』を読んでみると...(峰)
・阿部和重『ピストルズ』、舞城王太郎『獣の樹』
→東京育ちが憧れる地方の風景(仲俣)
・『教養してのロースクール小論文』浅羽通明(斎藤)
→『倫理問題101問』(charlie)
→両2冊、サンデルがおもしろかった人に。
・第二の故郷、岩手にちなみ...(ホプソン)
→みちのく三部作『天を衝く』高橋克彦
・トマス・ピンチョン『メイソン・ディクスン』(伊藤)
→ロベルト・ボラーニョ『野生の探偵たち』
→ナバコフ『賜物』
・アメリカの象徴を描く、大好きなジャーナリスト(速水)
→ハルバースタム『覇者のおごり』
→アメリカがいかにダメになったか(速水)
・ピクウィック・クラブのおすすめの一冊
→タイのラッタウット・ラープチャルーンサップ『観光』
→中里介山『大菩薩峠』、島田雅彦『僕は模造人間』
・本当に好きな本は紹介できないので...(charlie)
→外伝でぜひ!(澁谷)

            text by Life助手;村山佳奈女

○関連アーカイヴ
・文化としての受験
http://www.tbsradio.jp/life/20061111_jyuken/

・Life×文学ワールドカップ
http://www.tbsradio.jp/life/20100417_life/

参考資料&選曲↓

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2010年8月 2日

2010年7月25日「Life 夏の1冊」Part6(外伝1)

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            ◆佐々木さんと速水さんは放送終了後にお仕事話。


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○今、日本人にマイケル・サンデルがウケる理由
・『こころ』が選ばれる理由(リスナー)
→二項対立で悩む主人公たち(リスナー)
・私立中高一貫校では評論文が多いらしい(斎藤)
・井伏鱒二が『山椒魚』を書き直している話(仲俣)
・アメリカのディスカッション教育(ホプソン)
→謝りどころが難しい(charlie)
→「解釈の多様性」ではない日本教育(澁谷)
・charlieの評論が受験に使われている理由
→中途半端に悪文、っていう...(charlie)
→「著者と一緒に解く現代文」ってどうかな?(斎藤)
・マイケル・サンデルが売れている理由は?(仲俣)
→「考えたい」欲求のある世代(charlie)
→日本人がいかに哲学の訓練を受けていないか(charlie)
→「考えるっておもしろい!」というニッチ市場にウケた?
・webサイトからわかるNHKの本気(charlie)

○「図書館っ子」の面々が語る・「おもしろい」本とは
・いい本に出会うスキル、図書館体験(charlie)
・図書館などでうろうろすることの重要性(ホプソン)
・Amazon時代の勘違い・「おもしろい本」とは(charlie)
→自分が生まれる前に書かれた本を読もう(charlie)
→閉架にある本を読むと優越感にひたれます!(斎藤)
・Amazonによって、書店での購買に変化も(斎藤)
・女性/男性作家で分けている意味が不明(charlie)
・ジュンク堂が図書館っぽくて好きです(峰)
・新聞の縮尺がたまらない件(澁谷&charlie)
・夏は、検索では出会えない本に出会うべし(charlie)
・司書さんに頼る。「こういう本ありますか?」(charlie)
・峰さんと、ムラムラする本を聞く全国ツアーを(斎藤)
→アメリカの方にダジャレを言われるとは...!(charlie)

○読書を自分の血肉にするためには?(リスナー)
・学生時代に読んだカントを忘れている(リスナー)
・本と喧嘩する。批判などを書き込む(澁谷)
・線を引けないので付箋を貼る(charlie)
・宇野常寛さんとcharlieの共通点
→全体の構造を先に読む(charlie)
・フェミニストが嫌われる最大の理由(charlie)
・今だから読むべき80年代の本が(charlie)
→全体像をフィクションとして読む(仲俣)
・83年『構造と力』で大きく変化(charlie)
・『父として考える 』、書き手への興味(charlie)
・本は出会わないと出会い上手になれない(charlie)

             text by Life助手;村山佳奈女
               

○LIfe関連アーカイヴ
・教養
http://www.tbsradio.jp/life/20070317/

・現代の現代思想
http://www.tbsradio.jp/life/20090524/

参考資料↓

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2010年8月 3日

2010年7月25日「Life 夏の1冊」Part7(外伝2)

             DSCF1602.JPG
                ◆「なゆなゆ&トモミ」新コンビ誕生!?



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○Lifeパーソナリティの賞罰事情
・プッチンプリン・ソーダ味を投入してみた(charlie)
・間接キスをするのしないの問題→食べなよ、食べちまいなよ(澁谷)
・政権交代だね~(斎藤)
・読書感想文で入賞するための3原則発見!(リスナー)
・朝日新聞に詩が掲載されたことが(斎藤)
・生まれて初めての賞はギャラクシー大賞(charlie)
・電通主催の広告論文賞を中学生で受賞(澁谷)
 →代理店を意識していた中学生時代(澁谷)
 →上野千鶴子の代理店感覚(charlie)
・小学生時代、作文コンクールで校長室に(速水)
・文章で賞なんかとらなくても大丈夫(charlie)

○本との出会い・セレンディピティ
・いろんな紀行文に影響を受けました(リスナー)
・旅行嫌いのシティボーイ・速水さん
・セレンディピティを鍛えるには歩かなきゃダメ(charlie)
 →越谷のタクシーでセレンディピティ(charlie)
・精神的にくすぶった時に読む一冊(リスナー)
 →いい本を読める人はいい文章を書ける(charlie)
 →雑誌『Number』の原点、本当は...(速水)
 →スポーツビジネスが確立した現在の在り方(charlie)

・2、30代のうちに読むべき本は?(リスナー)
・ドストエフスキーを中学で読む不適切(仲俣)
・ソバージュだった頃の上野千鶴子さん(澁谷)
 →人の人生を読むおもしろさ(澁谷)
・小中高と、海外文学しか読んでいなかった峰さん
 →「日本文化はダメだ!」という親の方針で...(峰)
・charlie好き過ぎて紹介しなかった本を熱く解説
 →絶版『麗しのUS』がクリーンヒット(charlie)
 →「悪を描ける」ことは文学の魅力のひとつ(charlie)
・具体的な本の紹介より「本との出会い」を(charlie)
 →まとめは外伝3で澁谷さんが!

                 text by Life助手;村山佳奈女


○Life関連アーカイヴ

・ひと夏の思い出
http://www.tbsradio.jp/life/20070826/

・未知との遭遇
http://www.tbsradio.jp/life/2009125/

参考資料↓

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2010年8月 4日

2010年7月25日「Life 夏の1冊」Part8(外伝3)

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        ◆清志郎モドキに絡むファンとファンに邪険にされる清志郎モドキの図


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○澁谷知美の文化系トークラジオLife・外伝Part.3
・このオープニング、すごいな!!(charlie)
・東方神起の話のときは乙女顔の澁谷さん
 →charlieの声で乙女顔になる女子も2、3人は...(澁谷)
・今年は旅先で文庫本を読みたい(リスナー)
 →片岡義男作品の、男のナルシシズム
・戦後の野望と青春を描いた大藪春彦(リスナー)
 →片岡義男は80年代じゃなくて70年代(速水)
 →「僕の青春」。速水さんのよくわかる解説
 →過剰なヒップホップだよね(charlie)

○パーソナリティ・澁谷さんおすすめの3冊
・他人の人生を読む面白さ。新作と古典を(澁谷)
 →『サリンとおはぎ』「起きていることに意味はない」
 →「逆カツマー」!(charlie)
・『ビジネス書大バカ辞典』(澁谷)
 →日本のダイアナ・ロスですよね(速水)
 →ビジネス書に毒された脳を洗浄できます(澁谷)
・日本でビジネス書と自己啓発書はごちゃ混ぜ(速水)
 →大前研一と神田昌典の影響(速水)
・「変革本」と「自己肯定本」の存在(charlie)
 →「がんばらなくても変わる」がオカルト(速水)
・「恋愛エッセイ」はビジネス書の転換版(速水)
 →「習慣を変えれば」は「化粧を変えれば」(charlie)
・恋愛棚に「復活愛」が多いのはなぜ?(斎藤)
 →「限りある資源を大事にしよう」ということです(澁谷)
 →じゃあ一夫多妻制? 新旧パーソナリティによる議論

流れを完全に断ち切り、津田さん登場
・斎藤さんのキヨシローライブに参加した津田さん
 →津田くんが選挙出る時は応援演説するって決めました(斎藤)
・「正しいは伝わらないけど楽しいはうつる」by森毅
 →『ぼくはいくじなしと、ここに宣言する』(津田)
・別冊宝島に影響を受けた津田さん、斎藤さん
・Twitter社会論、アプリ版出ました(津田)
 →追加テキスト、東浩紀さんのTwitter論、音声など追加
 →あっ、澁谷さんによろしくお願いします!(津田)

                       text by Life助手;村山佳奈女

○Life関連アーカイヴ

・自分探し
http://www.tbsradio.jp/life/20080309/

・いま、聞きたい名言
http://www.tbsradio.jp/life/20100124/


参考資料↓

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2010年8月 6日

2010年7月25日「Life 夏の1冊」~放送後記動画

■放送後のスタジオの様子をご覧いただけます。

※動画をご覧いただくにはWindows Media Playerが必要です。

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2010年8月 8日

2010年7月25日「Life 夏の1冊」未読メール特集1

「夏の一冊」の放送&外伝で読めなかったメールの中から、
セレクトしてご紹介していきます。

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魚の声 29才会社員 埼玉県所沢市

思春期―それは、何に対しても背伸びをしたくなる時期。
それは、高校生がわざわざ分厚くて難解そうな本を手にとり、
「図書館でコレを読んでるオレ、カッコイイ」と勘違いする時期。
そして、そんな犯罪的行為をしたとしても、情状酌量の余地が
認められる時期。
これより先の文章は、そんな元高校生がフェルナン・ブローデル
地中海』との出会いを自己弁護する試みです。

それまで「泣くよウグイス平安京」が歴史の方法論だった高校生は、
暇に飽かして入った図書館で犯罪的イタさを遺憾なく発揮した結果
この歴史書と出会い、そして度肝を抜かれました。
なぜならそれは、事件を時系列に並べたり人物の行動を記述したり
といった、それまでの一般的な歴史書の記述法ではなく、
むしろそうした事件や行動を可能にした背景にこそ着眼点を置いて
書かれていたからです。

その土地の経済、社会、宗教から、山の険しさや海の豊かさ、
果ては人々が何を食べていたかといった、様々に異なる要素。
そうしたひとつひとつを丁寧に分類・分析し、それらが人間の行動
をいかに可能にし、そして制約してきたのかを描き出したこの本は、
読み手の貧弱な知的枠組みを粉砕するのに十分でした。

本を読み終えたとき、あまりの疲労にフラフラになりながらも、
叫び出したいような走り出したいような、なんだか妙な感覚が
全身を支配していたことを覚えています。

もちろん所詮は高校生、内容の一割も理解できていなかったに
違いありません。しかし彼は、そのときはじめて「ものを知る喜び」
に触れたのだと思います。

甲子園のサイレンがひぐらしの鳴き声に変わるまでずっと図書館に
通いつめ、熱に浮かされたように読みふけったこの『地中海』ほど、
夏の一冊にふさわしいものはありません。


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てんぴゅ~る麻希

夏に読む本なら、新田次郎の山岳小説です。

最近では、『週刊ヤングジャンプ』でコミカライズされているので、
知っている人も多いかも。
真夏の暑い日に、冬山を登山する話を読むと、涼しい気分になります

※『孤高の人』は、ラジオネーム「かにかま」さんからも一票いただきました。
僕も子どもの頃、父親の影響で新田次郎など山岳小説が好きでよく読んでいました。
『孤高の人』もそうですが、特に悲劇的な作品に妙に惹かれて、山で命を落とした
クライマーたちを描いた実録小説『山に逝ける人々』(春日俊吉)なんかも愛読していました。(黒幕)


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サンボマイスター

僕の「夏の一冊」は、サリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』です。

小学生のときに、吉田秋生さんの『バナナフィッシュ』にハマり、
そのタイトル元になった作品が収録されているということで、
夏休みの読書感想文用に手に取りました。結局、難しすぎて感想は
別の本で書いたのですが(笑)、
その作品、「バナナフィッシュにうってつけの日」の不条理で気怠い雰囲気
にはカブれまくりましたねー。後年、書かれた社会背景や、サリンジャーの
来歴に考えが至るようになってから再読したときに、また違った印象を持った
のも印象的でした。

というわけで、「夏の一冊」といえば、サリンジャーの放つ
都会的な憂鬱の匂いを思い出すのでした。

余談ですが、本に限らずに選ぶなら、夏といえば『エヴァンゲリオン』と
『AIR』(keyのゲームの)です(笑)。


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ゆみ 25歳 女性 千葉県柏市

わたしの夏の一冊は、おそらく中学校の時に学校の図書館で借りた
ひとりぼっちの不時着』という外国の児童向け小説です。
離婚した両親の父親に会うため、夏休みに一人で小型飛行機に乗ったら
カナダで不時着、パイロットも死んでしまって助かったのは自分だけ、
持っているのは手斧だけ、という状況でサバイバルする少年の話でした。

不可抗力でサバイバルせざるをえない状況になってしまった少年が、
きっと不時着したときはなまっちろくてよわよわっちかったのに、陽に焼けて
腕の筋肉がついてゆくような様が思い浮かぶようで、夏休み中何度も読み返しました。
わたし自身はそうとうに一人ぼっちな感じの暗い思春期を送っていたのですが、
少年のまぶしさと自分がひとりぼっちの陰と陽のように思っていた気がします。

今であれば、辺見庸さんの『もの喰うひとびと』が夏に読みたくなる本です。
読むと、ひとりぼっちで地球の上に投げ出されてみたくなります。
ひとりを肯定するような本が多く思い浮かぶ気がするのは、夏だとひとりぼっち
でもあんまり寂しくない気がするからなのかなー、と思います。


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コウキ 15歳の高1

夏といえば恋の季節、というわけでおすすめの恋愛小説は、
佐藤多佳子『黄色い目の魚』です。

鎌倉を舞台に、絵の好きな少年と少女が互いにひかれて行く様子を
書いた作品ですが、この手の小説によくあるベタついた甘いシーンなどがなく、
むしろこざっぱりとした、鎌倉の海のようにきれいな文章の作品です。

二人が意識しあう様になるまでの過程も本当に自然で、
恋ってこんなゆっくりした物の筈だよね、なんて感じたりしました。
蛇足ですが小学6年の時の遠足の行き先も鎌倉で、すきだった女の子と
同じ班になって由比ヶ浜に行った事を思い出して感傷にひたるはめになりました。
最近の恋愛小説になじめない方に読んで貰いたい作品です。

※15歳にして恋の感傷...でもなんかわかるなその感じ。
中学生の頃に小学生時代を振り返って「もうあの頃のように無邪気ではいられない」
とか勝手に思ったり(笑)。(黒幕)


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名前なし

私が夏というと思いだすのは橋本紡の『空色ヒッチハイカー』です。
東大志望の高3の主人公が無免で、車を運転し、ヒッチハイクをする人を
片っ端から乗せていきながら九州に行き、東大をでて農家に嫁いだ兄を
連れ戻しに行く話なのですが、主人公に自分を投影し、中二病になれる
作品です(笑)

人と人の繋がりについて考える作品でもあると思います。

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2010年8月 9日

2010年7月25日「Life 夏の1冊」未読メール特集2

おーいお茶・玉露 茨城県取手市 33歳 男性

「夏の一冊」ということで、私が挙げたいのは梅崎春生の『桜島』です。
夏というと、どうしても「戦争」の記憶が浮かび上がります。
私は直接戦争を体験した世代ではないのですが。

この作品については様々な評価があるかと思いますが、私がこの機会に
改めて読み返してみて面白いと思うのは、終戦に至るまでの一兵卒の行動が、
決して「緊迫した」とか「ぎりぎりの」とかいった形容が当てはまらない形で
書かれているということです。

主人公は、暗号兵として桜島にいた著者自身が重ね合わされていますが、
避けられない運命としての「死」を常に意識していて、「美しい死」を夢想しつつ、
その「死」が間違いなく目前に迫ったと思われたときに、霹靂のように終戦が
訪れる様が、まるで私小説のように描かれています。

日本の戦争にまつわる作品としては、大岡昇平の「野火」なども有名ですが、
ああいった分析的な、堅固な骨格をもったいわゆる「戦争文学」とは
対照的なもののように思います。

しかも、この作品は発表こそ終戦の翌年の9月ですが、執筆は終戦直後の10月
あたりだったようで、普通に考えたら戦争体験自体を相対化できそうにない時期に、
あくまで「小説」として作品化されていて、それが今読んでも十分に鑑賞に耐え、
なおかつその後の戦争観(特攻兵を聖化したりとか)がまだ生まれていない時期に
書かれた素直なリアルさとでも言うべきものが漂っています。

ある意味では感傷に流れすぎ、無防備すぎる点もあるのかも知れませんが、
同じ著者の、中年になった男が戦中に兵隊として駐留した地を再訪する「幻化」
(著者の遺作)とともに、読んでみて欲しい作品です。

※島尾敏雄の『出発は遂に訪れず』などと並ぶ戦争文学の傑作ですね。印象深い1冊。(黒幕)

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紘一 千葉県流山市 71歳 男性

太陽の季節』。
高校三年の時に読み、
まねしたが大失敗。
そんな思い出しかないのが悲しい。

※何を真似して大失敗したんでしょうか?障子を突き破れなかったとか...(黒幕)


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麦茶

私の夏の一冊は庄司薫さんの『ぼくの大好きな青髭』です。
都会っ子の夏の冒険といった内容ですが(だった気がします。)、
内省的な「行動できない派」のメンタルもある主人公で、
行動派でも何もしない派でも全中高生におすすめです。

同一主人公のシリーズもので他に3冊ありますが、
どれも捨てエピソード無しの傑作だと思います。

なんかLifeっぽい気もしますし、感想文も書きやすいんじゃないでしょうか。

※和製『ライ麦畑~』の代表格。『赤頭巾ちゃん気をつけて』の
 「若さは一つの困惑なのだ」という三島由紀夫の推薦文もいいですね。(黒幕)


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ストクロ

僕の夏の一冊は、石田衣良さんの『池袋ウェストゲートパーク』です。
高校の夏に、この本を読んだのがキッカケで、読書が好きになりました。

田舎出身の僕には、都会の風景や状況は、この本に出てくる感じなのかな
と思っていました。


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珈琲とうどん 女性

学生時代は夏といえば長い夏休み。夏休みといえば旅ですね。 
暑いときに 暑さを堪能するのは夏の醍醐味です。

うだるような暑さのなか、クーラーをつけずに扇風機を回して、
冷えたアイスコーヒーでも飲みながら読みたいのが、椎名誠さんの
インドでわしも考えた』。シーナさんが素直に驚いたインド体験を、
高校生のときに面白おかしく読んで以来、憧れの旅先でした。

念願かなって、のちにインド体験したときは、もわっとした暑さと
慣れない食べもののおかげで体調を崩し、ただひたすら気持ちが
わるかった印象 が強いので、いつか再訪したいです。

沢木耕太郎さんの『深夜特急 インド、ネパール編』や
藤原新也 『印度放浪』と読み比べも。


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2010年8月10日

2010年7月25日「Life 夏の1冊」未読メール特集3

夏本番、海か山かプールか、いやまずは本屋!(30代、男性)

最近発売された、経済系のノンフィクションをオススメしたいです。

リーマン・ショック・コンフィデンシャル 上 追い詰められた金融エリートたち
リーマン・ショック・コンフィデンシャル 下 倒れゆくウォール街の巨人
アンドリュー・ロス・ソーキン著、加賀山卓朗(かがやまたくろう)訳
原著『Too Big to Fail』(各2,100円、早川書房)

2007年夏にサブプライムローン問題が顕在化する以前から、2008年夏の
リーマンショック後まで、米政府、連邦銀行、投資銀行がどのように行動
していたのか。ニューヨークタイムズの記者が緻密な取材で問題の本質に
迫っているノンフィクションでした。単純に、FRBや金融業界の首脳たちが
悪いわけではないことがよく分かります。

ちなみに、キンドルの日本発売と原著のヒットの時期が重なっていたので、
今年の頭ごろ、金融業界の人たちの間では原著をキンドルで読むのが
流行っておりました。

世界的不況の要因として、何かと悪者扱いされている金融業界ですが、
現在の経済状況を知るのに適切な1冊だと思います。


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毛虫スタジアム 鳥取県 30歳 会社員

夏と言えば「AIR」と「イリヤの空、UFOの夏」ですが、
AIRはエロゲだし、イリヤは4冊なので1冊には当てはまらないと
思いやめました。

ということでハインラインの『夏への扉』にします。
内容は夏の話ではないのですが、タイトルに夏と入っているのと
最後あたりに出てくる「そして未来は、いずれにしろ過去にまさる。
誰がなんといおうと、世界は日に日に良くなりまさりつつあるのだ。」
というところが気に入ってるからです。
大人にとっての夏と言えば、思い出だとかノスタルジーというところに
行きがちで「あの頃はよかった」とか「二度と戻らないあの夏の日」
みたいな微妙にネガティブな話になってしまうので、
だからこそ未来に希望を置いてるこの文章が好きですね。

私も今までの夏より今年の夏が一番楽しくなると思っているし、
来年の夏はもっと楽しくなっていると思いながら過ごしています。

※「夏といえば『AIR』(Key)」という人、多いですねー(黒幕)


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タイトウ商会

私の夏の一冊は、中上健次の『枯れ木灘』です。
夏に読んだ訳ではありませんが、暑い夏の出来事が、
ジリジリする描写でだらだらと汗が出るように描かれています。

特別なことは言えないんですが、夏といえばこの小説が浮かびました。
今時、中上さんの小説を読む人も少ないのかな。

※僕も真夏にクーラーもつけず汗だくになってつっかえつっかえ読んだ記憶が...(黒幕)


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福田十二指腸

昼は研究員、夜はマッスル・ドッキング(MusselDocking)というバンドで
ボーカル、ダンス、寸劇などにいそしむナナロク世代の山羊座ボーイです。

私にとっての夏の一冊といえば、この本に決まりです。
まことちゃん、こと、川島誠 著,『800』。

大学時代の夏、TOEICを受けた帰り道にチャリンコで立寄った
幹線道路沿いの小規模ショッピングセンターに入居している書店で、
"江國香織さんが推薦!"という書店員による手書きPOPが目に入り、
どれどれ?と冒頭を読んでみました。

『なぜ八〇〇メートルを始めたのかって訊かれたなら、
雨上がりの日の芝生の匂いのせいだ、って答えるぜ。』

というオープニングに胸を撃ち抜かれ、突然発汗、買わねば!読まねば!
さもなくば絶対に悔いるぜ!と思い、焦るようにして即購入、
数日後にタイのバンコクに旅行に行ったのですが
現地のホテルで一気に読んだことを覚えています。
帰国後に失恋をしたことも、忘れそうですがまだ覚えています。

『なぜ"800"を読んだのかって訊かれたなら、
本屋でたまたま読んだ冒頭の一文のせいだ、って答えるぜ。』

内容はアマゾンからの引用を・・・・
-----------------
思い込んだら一直線、がむしゃらに突進する中沢と、何事も緻密に計算して
理性的な行動をする広瀬。まったく対照的なふたりのTWO LAP RUNNERSが
走って、競い合って、そして恋をする―。
青空とトラック、汗と風、セックスと恋、すべての要素がひとつにまじりあった、
型破りにエネルギッシュなノンストップ青春小説。


==================


ビアンコ 38歳 品川区男性

人と比べて「あまり本を読んでないな~」と思ってる自分が、
今回のテーマで、あるTV番組を思い出しました。
フジTVの深夜番組の『文學ト云フ事』です。
日本の文学作品を毎回1つ、映画の予告編風の映像取り上げる番組で、
井出薫・緒川たまき・袴田吉彦、等の当時の若手期待の俳優さん達を
見るのがきっかけでしたが、見ているうちに幾つか紹介された作品を
手に取りました。

その中で印象に残っているのが森鴎外『』と田中英光『オリンポスの果実』。

いずれも恋愛に至らない男女のすれ違いを描いた作品だったと記憶しています。
この番組放送の当時、色々な事情である人との恋愛に至れない自分の状況に
悩んでいたのですが、これらの作品を読み、「森鴎外の生きた明治時代の人も、
田中英光が生きた大正から昭和初期の人も、自分と似た境遇で悩んでいたの
だなぁ」と、自分の境遇が、昔から誰にでも降りかかるよくある、4月のLifeの
テーマにもなっていた「定番」なベタな出来事に思えて、「きっと誰にでも
起こる事だから、どちらに転んでも、きっとなんとかなるさ」と随分と救われた
気分になったものでした。

澁谷知美さんが「作品の向こうに人がいる」と言うな事をおっしゃっていましたが、
これらの作品を通じて明治・大正の人達と、悩みの共有というコミュニケーション
を図れた様な気がします。

※『文學ト云フ事』で僕が印象的だったのは緒川たまきさん主演の『夢十夜』(黒幕)。

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2010年8月12日

2010年7月25日「Life 夏の1冊」未読メール特集4

モレーン大学生 男(童貞)

「夏の一冊」と聞いて思い浮かぶのは乙一の『夏と花火と私の死体』です。
これを読んだのは高校生の時でした。自分と同じ年でこんなものが書けるなんて、
と衝撃を受けた記憶があります。
夏祭りの賑やかな雰囲気と死体を運ぶ子供たちの姿が対照的でとても印象に
残っています。近所の夏祭りを見ると、読み返したくなります。
他の作品も含め、乙一さんは僕の人生に大きな影響を与えました。それまでは
読書感想文のために無理矢理本を読むのがほとんどでしたが、あのときの衝撃を
求めて沢山本を読むようになりました。


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とんかつ

最近出た本なので、この夏オススメしたいです。

ヒップ アメリカにおけるかっこよさの系譜学
ジョン・リーランド著、篠儀直子(しのぎなおこ)・
松井領明(まついりょうめい)訳
(ブルース・インターアクションズ刊、\2,940)
原著John Leland "HIP THE HISTORY"

アメリカのカウンターカルチャーを「ヒップ」(カッコいい)というキーワードで括った、
600ページもの分厚い本です。音楽、映画、ファッションの固有名詞がバンバン
でてきて、アメリカかぶれにはたまらない一冊です。
昨今、サブカルも政治も経済もドメスティックな話題ばかりで、もっと海外に目を
向けてもいいのではと思います。
でも、この暑いさなか、「アメリカにおけるかっこいいこととはなにか」、というテーマを
書籍で読むこと、しかも日本語訳で読むことのかっこ悪さは否定できません(苦笑)。
ホントにヒップなやつは外に出て遊んでいますよね、、、(リア充希望)。

 

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フルーツ 女性

暑い時にもっとこってり暑い小説を、と毎年読み返すのは
コインロッカー・ベイビーズ』 (村上龍)
ダチュラってバルスくらい一般的に使われてもいい単語ですよね


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white

椎名誠 『哀愁の町に霧が降るのだ

こんばんは。初めてメールさせていただきます。夏の1冊、
と言えば個人的にはこの作品です。

作品の内容的には夏らしい話題メインでもないし、よくある夏の艶やかなエピソード
満載というような作品ではありませんが、青春時代の勢いや甘酸っぱさをストレート
に感じさせてくれる作品です。夏だし女の子と海へといういわゆるリア充的青春では
なく、仲間内でただひたすらにだらだら遊んでいてそれが楽しいという感覚をリアル
に味わうことが出来、なおかつそんな青春時代のモラトリアムはいつか終わって
しまうものだというセンチメンタルなテーマをも考えさせてくれる素晴らしい作品だと
思います。

それに、お酒や食事の描写が抜群に上手いので、よくこれを読みながら飯を食って
ました(笑)。この本を初めて読んだのは大学生の時だったんですが、作品に感化
されて行動を真似るように友達と酒を飲んだりいろんな与太話をしたりしたものです。

今は社会人3年目になりそれなりに仕事や社会人という立場に慣れようとしています
が、未だにモラトリアムを引きずっている自分にはある種自らの青春時代のバイブル
というか、大学生時代の生活を思い出させてくれる非常に印象深い1冊になっています。

今このLifeを聴いている学生の方々はぜひこの作品を読んで、夏に突入し残り少なく
なってしまったモラトリアムを悔いの残らないよう満喫して欲しいと思います。


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ゆき 30代 女性

「夏の一冊」を書いてみたいと思います。

わたしが・棄てた・女』遠藤周作はどうですか?
まだ未熟な女が暑い夏読むのが色っぽいように思うのですがw
この本の熱が冷めるころに秋がきて、ふと、この本の影響で大人の女になれている
なんてことも有り得るかと。
大人になりたくない女性はまだ読まないほうがいいかもしれませんw
男と女を内から外から飲み込める作品かと思うのですが。
わたしはこの男は好きではないけれど、そういう問題じゃぁないです♪
ストーリーについてなど書くと長くなるので控えますが、
これを読んだとき、なぜこんな女がこんなにも女なんだろう? と思いました。
きっと、男にとって古い女になっても、男にとって忘れられない女だからなのだとも
思います。深刻な部分も同情とか憐憫なく淡々と読めばいいと思うんです。

男1人称、女3人称で交互に書かれているのも好きです。
書いているのは、いかにも男だとわかるのに、なんだか女っぽい作品だと思います。


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優 17歳女子 埼玉県ふじみ野市

すごく個人的な話になりますが、私にとっての夏の一冊は恩田陸さんの
チョコレートコスモス』です。

中学生の頃、お金も全然持って無かったので、ハードカバーの小説など買えるはず
も無かったのですが、初めて表紙を見てからずっと欲しくてたまらなくて、夏休み中、
頑張って節約してお金を貯めて、新学期の1週間前にやっと買って、1日で読んだ
記憶があります。

そもそも本は大好きだったのですが、ほんとに一日中本だけ読んで過ごしたのは、
あの時が初めてだったと思います。

夏休みじゃなきゃできないような贅沢な時間だったなぁ、と今は思います。


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2010年8月16日

2010年7月25日「Life 夏の1冊」未読メール特集5

「Life・夏の一冊」→ http://www.tbsradio.jp/life/20100725life_1/
の放送、外伝で読めなかったメール中からセレクトして照会する未読メール特集。
今回はこれにて完結です。

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中野区在住、45歳、独居中年、スターリング・エレファント

今回の《夏の一冊》というテーマ。学生時代は遥か昔に過ぎ去ったとは言え、
今でも確かにお盆休や年末年始、GWなどまとまった休みには、集中して
読書をしようという意欲は湧いてきます。

今度こそG=マルケスの『百年の孤独』新訳を読破だとか、
エンターテインメント小説の基本だからと、学生時代に古本市で買った
モンテ・クリスト伯』中央公論のハードカバーで三冊分を一気読みだとか、
若島正新訳による『ロリータ』をじっくり味わう、あるいはダシル・ハメットの
長編・短編まとめ読み、ついでにDVDで、ハメットに影響されたという大藪春彦
原作、岡本喜八監督の『暗黒街の対決』、さらにそれに影響された黒澤明の
『用心棒』、さらにさらにセルジオ・レオーネの『荒野の用心棒』も検証だ。

などと妄想は膨らみますが、雑事に追われていずれも果たしていません。
そういえば映画に目覚めた中学生時代、映画の原作を追いかけるという形で、
各出版社の文庫を読みだしました。だから、そういった映画原作やノベライズを
擁していた70年代後半の、ハヤカワ文庫、角川文庫、新潮文庫などが特に印象
に残っています。思えば、映画自体は観ていないのに、なぜか発作的にハヤカワ
文庫のスタインベック『エデンの東』全4冊を、中3の夏休みに読んだっけ。
全く内容覚えていませんが。

やはり映画原作で、中3の夏に読んだのがスティーヴン・キングの『シャイニング』。
地方では2年近く遅れてリバイバルされた映画『2001年宇宙の旅』に、ものすごい
ショックを受けた私は、このスタンリー・キューブリックという監督が次回作として
製作している『シャイニング』というホラー小説に興味を持ちました。
私の田舎の町には映画館はもちろん、書店も、図書館もなく、中学の図書室は
エンターテインメント系の小説など購入してくれません。かなり無理してハードカバー
版上下2冊(深町真理子訳、パシフィカ)を買いました。文庫の『2001年宇宙の旅
時計じかけのオレンジ』は読了して満足。『ロリータ』『バリーリンドン』の原作も
文庫になっていましたが、非SFなのでそちらにはいきませんでした。

今の若い人たちにとってスティーヴン・キングという作家はどう映るのでしょう。
子供たちの苦いイニシエーションもの映画『スタンドバイ・ミー』の原作者か。
ショーシャンクの空に』、『グリーンマイル』という刑務所を舞台にした感動作の
原作者か。もしくは同じフランク・ダラボン監督の手になる、最悪にダウナーな気分に
落ち込む極限ホラー『ミスト』の原作者。もしくは宮部みゆきや村上春樹がリスペクト
する、超絶のエンターテインメント作家。

80年前後のキングは、すでにアメリカでは押しも押されぬホラーの超ベストセラー
作家になって次々作品を発表していましたが、日本ではなかなか翻訳が進まず、
79年当時出版されていたのは超能力少女もの『キャリー』、現代ヴァンパイアもの
呪われた町』、そして『シャイニング』の3作のみ。その後も遅々として進まず
ファイアースターター』、『クージョ』が出たのは83年以降。
白石朗訳で、あまりタイムラグもなく短編・長編が出ている今からは、
考えられない飢餓状態だったのです。

『シャイニング』はアルコール依存症という爆弾を抱えた売れない作家、
ジャックがつなぎの仕事として、コロラドの山頂にあるシーズンオフのホテルに
管理人として雇われるところから始まります。妻と5歳になる息子ダニーとともに、
家族だけでひと冬を隔絶された状態で過ごさなければならない。
だが、そのホテルは忌まわしい殺人事件を呼び込む、幽霊屋敷だった。
ホテルに巣食う邪悪な存在は、テレパシー能力を持った幼いダニーを取り込もうと、
禍々しい攻撃を加えてくる...。
古典的なゴシックホラー、幽霊屋敷ものを現代的な感覚で甦らせたと言われる本作
ですが、当時中学生だった私には、恐怖描写よりジャックが蝕まれている
アルコール依存症、そのせいで若い妻や幼い息子に対してふるう暴力、そんな状況
の中、持って生まれたテレパシー能力のせいでイヤでも汚い現実や大人の本性を
知ってしまい、孤独と混乱に耐えているダニーと、家族が直面するさまざまな問題が
印象に残りました。

70年代当時の日本ではまだアルコール依存症、ドメスティックバイオレンスなどは
重大な社会問題として認識されておらず、近年になってそれらが取りざたされるたび
に『シャイニング』を思い出したものです。これは作家としてなかなか認められず、
高校教師やボイラーマンなど、他の仕事で糊口をしのぎながら、うっ屈を抱えていた
キング自身の体験が反映されているとか。しかし、さまざまな社会問題や時代の
空気、要素をホラーという枠に落とし込み、非常に饒舌な文体で怒涛のストーリー
テリングを展開する本作、正直怖くはないが、とにかく面白い。
しかもこれを書き上げたとき、キング28歳というんですから。

自分を認めない世間へのうっ屈を抱えた人間、アルコール依存症、DV。
それらの要素も含め、今読んでも古びていないと思います。
むしろ今の日本でこそ、より深く実感できるかも知れません。
ゾーっとする怖さではありませんが、この猛暑の中、雪に閉ざされた山という
シチュエーションを想像して涼むのも一興でしょう。
それから、よしもとばななの『キッチン』の冒頭、ひと冬を越えることも可能な大きな
冷蔵庫というフレーズ、本作に対するオマージュだと思うんですが。

なお、パンパンに期待に膨らんでいた、キューブリックの映画版は81年末の
正月映画として公開されましたが、これにはがっかりしました。
初めてスティディカムを使用した独特の浮遊感とスピードに満ちた映像や、
いくつかの恐怖描写は印象に残るのですが、エンターテインメントとしては全く不発。
邪悪なものに取り込まれるアルコホリックのジャック・ニコルソンに物語が偏り過ぎ。
なにより、ダニーと同じく超能力を持ち、彼のいわば父親代わりとして危機を救って
くれる黒人のコック、ハロランの扱いがひどすぎる。

まあ、『シャイニング』はイマイチでしたが、キューブリックに対する畏敬の念は今も
変わりません。ちょっと頑張って新訳の『ロリータ』『時計じかけのオレンジ』を読んで
みましょうか。あ、それから『シャイニング』のオープニングの山道を滑るように進む
空撮が『ブレードランナー』に流用されているのはご存知ですか?
分厚い『メイキング・オブ・ブレードランナー』という本がありまして・・・。


膨大な参考資料↓

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2010年8月17日

Life in 京都 「地域→ジモト-若者文化のいま・むかし・これから-」Part1

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2010年7月3日(土)に京都リサーチパーク町家スタジオで開催された
Life in 京都~:地域→ジモト-若者文化のいま・むかし・これから-
の様子をPodcast配信します。

主催の「Life in 京都」実行委員会が録音してくれたものです。
録音レベルの問題で後半は一部聴きづらい箇所もありますが、ご了承ください。

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      charlie  仲俣さん  速水さん           辻大介さん     難波功士さん

 

※再生できない場合は、個別ページTBSラジオクラウドにてお聞きください。
※最新エピソードはユーザー登録なしでお聴きいただけます。

★出演:鈴木謙介(関西学院大学准教授,Lifeパーソナリティ)
      難波功士(関西学院大学教授)
      辻大介(大阪大学准教授)
      仲俣暁生(編集者,Lifeサブパーソナリティ)
      速水健朗(ライター,Lifeサブパーソナリティ)

★特設サイト: http://d.hatena.ne.jp/lifeinkyoto/

★主催:「Life in 京都」実行委員会  協力:文化系トークラジオ Life

参考資料↓

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2010年8月18日

Life in 京都 「地域→ジモト-若者文化のいま・むかし・これから-」Part2

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   「Life in 京都」実行委員会の島貴彬くん


※再生できない場合は、個別ページTBSラジオクラウドにてお聞きください。
※最新エピソードはユーザー登録なしでお聴きいただけます。

※ご当地ソングの話題で速水さんが名前をど忘れしてしまったのは、
 永六輔(作詞)&いずみたく(作曲)のコンビとのことです。


※Life関連アーカイブ
2006/10/07 「バブル」ってなんだ?
http://www.tbsradio.jp/life/20061007_bubble/

2010/05/23「クルマ社会の過去・現在・未来」
http://www.tbsradio.jp/life/20100523/


参考資料↓

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2010年8月19日

Life in 京都 「地域→ジモト-若者文化のいま・むかし・これから-」Part3

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    LifeオリジナルTシャツを販売しました!



 

※再生できない場合は、個別ページTBSラジオクラウドにてお聞きください。
※最新エピソードはユーザー登録なしでお聴きいただけます。


参考資料↓

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2010年8月20日

Life in 京都 「地域→ジモト-若者文化のいま・むかし・これから-」Part4

2010年7月3日(土)に京都リサーチパーク町家スタジオで開催された
Life in 京都~:地域→ジモト-若者文化のいま・むかし・これから-

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   Life in Kyotoはこんな感じの素敵な町屋で開催しました!懇親会も大盛況。


 

※再生できない場合は、個別ページTBSラジオクラウドにてお聞きください。
※最新エピソードはユーザー登録なしでお聴きいただけます。

★出演:鈴木謙介(関西学院大学准教授,Lifeパーソナリティ)
      難波功士(関西学院大学教授)
      辻大介(大阪大学准教授)
      仲俣暁生(編集者,Lifeサブパーソナリティ)
      速水健朗(ライター,Lifeサブパーソナリティ)


※風のノイズ(?)などで音質があまり良くありませんが、ご了承ください。


参考資料↓

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2010年8月21日

Life in 京都 「地域→ジモト-若者文化のいま・むかし・これから-」Part5

            outrage 045.jpgのサムネール画像


※再生できない場合は、個別ページTBSラジオクラウドにてお聞きください。
※最新エピソードはユーザー登録なしでお聴きいただけます。


★出演:鈴木謙介(関西学院大学准教授,Lifeパーソナリティ)
      難波功士(関西学院大学教授)
      辻大介(大阪大学准教授)
      仲俣暁生(編集者,Lifeサブパーソナリティ)
      速水健朗(ライター,Lifeサブパーソナリティ)

★特設サイト: http://d.hatena.ne.jp/lifeinkyoto/

★主催:「Life in 京都」実行委員会  協力:文化系トークラジオ Life

※録音状態が悪く、聴きづらいところもありますが、ご了承ください。


参考資料↓

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2010年8月27日

2010年7月25日 「Life 夏の一冊」イラスト&感想

こんにちは、ディレクターのさわだです。
暑いですねぇ。
私事ですが、最近人事異動で、外に出ることが多い部署になり、
日に焼け汗かきまくりの日々です。
クソ暑い日には、喫茶店に入ってアイスコーシを飲みつつ、
文庫本を読んで涼みたいなぁと思ってるんですが、
入社2年目のペーペーには、そんな度胸はありゃしない。
いたって小市民なのであります。
もうちょっと偉くなったらできるようになるんですかね。

今月もBLOCKBUSTERの後藤さんからナイスなイラストが届きました。
放送を聴いた感想と一緒にお楽しみください。

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こんにちは、BLOCKBUSTERの後藤です。

今さらですが前回のサイトーさんの
アレっぷりにはヒヤヒヤしました。
フォローじゃないですけど、
ライブではカッコよかったんですよ。

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◆イラスト:後藤亮平(BLOCKBUSTER)

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2010年8月28日

8月29日「Life白熱教室~これからの"社会"の話をしよう」予告編

次回のLifeは

「Life白熱教室~これからの"社会"の話をしよう」

8月29日(日)深夜25:30~28:00

出演予定:鈴木謙介澁谷知美斎藤哲也速水健朗津田大介、森山裕之

ゲスト:萱野稔人(津田塾大学准教授)、飯田泰之(駒澤大学准教授)


※再生できない場合は、個別ページTBSラジオクラウドにてお聞きください。
※最新エピソードはユーザー登録なしでお聴きいただけます。

ウェブ中継を実施しますので、ラジオをお持ちでない方も、パソコンと
インターネット環境があればリアルタイムでトークを聴くことができます。
サイト右上の「スペシャルなお知らせ」をクリックしてください。
※著作権の関係で音楽は聴くことができません。

ラジコhttp://radiko.jp/では音楽も聴けます。
※TBSラジオのラジコのサービスエリアは東京、神奈川、千葉、埼玉です。

今回は大事な聴取率調査週間ですので、ぜひ生放送でお聴きください!

またUstreamによる動画中継も行う予定です。
詳しくは当日のTwitterの番組アカウント「 @Life954 」などをチェックしてください。


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charlieです。

具体的な何かの役に立つ知識だけでなく、純粋に知的な刺激や、
深い「原理」について知りたいという若い人が増えているのだそうです。
というかもともと若い人はそういうことに興味を持ちがちだと思うのですが、
不況の影響もあって「実学」や「就職に役立つ」ことが大学業界のウリに
なったりした反動なんかもあるんではないでしょうか。

そんな世相を反映してか、今年は新書以外でも、割と難しい内容の本が
売れています。そのひとつがアメリカの政治哲学者マイケル・サンデルの
『これからの正義の話をしよう』です。

10年以上前から彼の本を読み、この分野の問題について考えてきた僕としては、
突然のブームに戸惑ったところもありますが、じゃあ、Lifeでも、サンデルとは
違う角度から、私たちの求める「社会」のありようについて考えてみるのも
いいかなと思いました。

ということで今回のLifeは、「Life白熱教室~これからの"社会"の話をしよう」と、
勇気あるタイトルを掲げまして、いわゆる「思考実験」という奴をやってみようと
思います。思考実験とは、サンデルの講義でもやってましたが、極端なケースを
仮に想定して、その状況で自分はどう考えるか?を問うもの。

今回は長時間の打ち合わせで、次の四つの思考実験に挑戦することになりました。

1.恋愛格差の解消のため、恋人ができない人に「非モテ給付金」を
  支給するのはアリか?

2.若年雇用対策のため、就職のための努力をしなかった若者まで
  公的機関が雇用するのはアリか?

3.少子化対策のため、二人以上の子どもを作らない夫婦に課税する
  のはアリか?

4.世代間格差の解消のため、相続税の税率を100%にする
  のはアリか?

予告編のPodcastingでは、それぞれの問題についてもう少し詳しく説明して
いるので、ぜひそちらも参考にしてもらいたいんですが、実はこれらの問題、
先に種明かしをしてしまうと、「私たちは、個人や社会の問題を解決するために、
どのくらいのコストを負担する気があるか?
」ということについて考える問題
なんです。

金額の問題ではなくて、どこまでを社会(=私たち)の問題と考え、どこからは
自己責任にするかということを考えたいと思ってるんですね。

ゲストには哲学者の萱野稔人さんと経済学者の飯田泰之さん。
飯田さんのロジカルな思考と、萱野さんの熱いハートのぶつかりあいも、
いまから楽しみです。

リスナーの皆様からは、上に挙げたそれぞれの問題について、
アリ?それともナシ?その理由は?」ということでメールを募集したいと
思います。別に難しく考える必要はなくて、「なんかそれは納得いかない」
くらいの直感的な感想でもいいですし、払う側(もらう側)としては反対(賛成)だ、
というご自身の立場を反映したメールでも構いません。

メールを読まれた方には本家でもお馴染みの「ありがとう、君のラジオネームは?」
なんて返しがあるかも(笑)。

メールアドレスは、 life@tbs.co.jp 


※参考
NHK 「ハーバード白熱教室」
http://www.nhk.or.jp/harvard/about.html


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メールはぜひお早めに!
思考実験としてあえて極端な政策を設定してみましたので、細かい条件
などにはこだわらず、できるだけ大胆に、原理的に考えてみてください。
4つの設問すべて答えてくださっても結構ですし、どれか1つでもかまいません。

メールは設問ごとに分けて送ってくださると分類しやすいので助かります。



↓お買い上げ何卒よろしくお願いします!

★らじこん特別コンテンツ「映画『告白』をめぐって
http://www.tbsradio.jp/life/2010/07/life_39.html

★らじこん特別コンテンツ「クルマ社会の過去・現在・未来」SP番外編
http://www.tbsradio.jp/life/2010/07/post_157.html

LifeオリジナルTシャツ
http://www.j-shopping.jp/954ishop/org/program/life/

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2010年8月30日

ディスクユニオンからのお知らせ

「Life」をサポートしてくれているディスクユニオンからのお知らせです。

ディスクユニオン新宿スーパーセール開催
ディスクユニオン史上最大級中古セール!
各店強力廃盤セールを同会場に持ち込み同時開催。

○日 時
・9月4日(土) 12:00 から 20:00 まで
→ 各店の蔵出し目玉廃盤CD・レコードが一挙集結!
  タイム・バーゲンもあります!

・9月5日(日) 11:00 から 18:00 まで
→ 半額コーナー出現!もちろん廃盤の追加もあります!
  終日お買い得バーゲンもあります!

○場 所:
新宿カワセビル(新宿中古センターのビル2F)特設会場
(JR新宿駅徒歩3分 )

○お問い合せ:
ディスクユニオン新宿中古センター TEL:03-5367-9530
受付時間 11:00~21:00(日祝11:00~20:00)


詳しくはこちら↓をご覧ください。
http://diskunion.net/portal/ct/pickup_topic/17263

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