おーいお茶・玉露 茨城県取手市 33歳 男性
「夏の一冊」ということで、私が挙げたいのは梅崎春生の『桜島』です。
夏というと、どうしても「戦争」の記憶が浮かび上がります。
私は直接戦争を体験した世代ではないのですが。
この作品については様々な評価があるかと思いますが、私がこの機会に
改めて読み返してみて面白いと思うのは、終戦に至るまでの一兵卒の行動が、
決して「緊迫した」とか「ぎりぎりの」とかいった形容が当てはまらない形で
書かれているということです。
主人公は、暗号兵として桜島にいた著者自身が重ね合わされていますが、
避けられない運命としての「死」を常に意識していて、「美しい死」を夢想しつつ、
その「死」が間違いなく目前に迫ったと思われたときに、霹靂のように終戦が
訪れる様が、まるで私小説のように描かれています。
日本の戦争にまつわる作品としては、大岡昇平の「野火」なども有名ですが、
ああいった分析的な、堅固な骨格をもったいわゆる「戦争文学」とは
対照的なもののように思います。
しかも、この作品は発表こそ終戦の翌年の9月ですが、執筆は終戦直後の10月
あたりだったようで、普通に考えたら戦争体験自体を相対化できそうにない時期に、
あくまで「小説」として作品化されていて、それが今読んでも十分に鑑賞に耐え、
なおかつその後の戦争観(特攻兵を聖化したりとか)がまだ生まれていない時期に
書かれた素直なリアルさとでも言うべきものが漂っています。
ある意味では感傷に流れすぎ、無防備すぎる点もあるのかも知れませんが、
同じ著者の、中年になった男が戦中に兵隊として駐留した地を再訪する「幻化」
(著者の遺作)とともに、読んでみて欲しい作品です。
※島尾敏雄の『出発は遂に訪れず』などと並ぶ戦争文学の傑作ですね。印象深い1冊。(黒幕)
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紘一 千葉県流山市 71歳 男性
『太陽の季節』。
高校三年の時に読み、
まねしたが大失敗。
そんな思い出しかないのが悲しい。
※何を真似して大失敗したんでしょうか?障子を突き破れなかったとか...(黒幕)
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麦茶
私の夏の一冊は庄司薫さんの『ぼくの大好きな青髭』です。
都会っ子の夏の冒険といった内容ですが(だった気がします。)、
内省的な「行動できない派」のメンタルもある主人公で、
行動派でも何もしない派でも全中高生におすすめです。
同一主人公のシリーズもので他に3冊ありますが、
どれも捨てエピソード無しの傑作だと思います。
なんかLifeっぽい気もしますし、感想文も書きやすいんじゃないでしょうか。
※和製『ライ麦畑~』の代表格。『赤頭巾ちゃん気をつけて』の
「若さは一つの困惑なのだ」という三島由紀夫の推薦文もいいですね。(黒幕)
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ストクロ
僕の夏の一冊は、石田衣良さんの『池袋ウェストゲートパーク』です。
高校の夏に、この本を読んだのがキッカケで、読書が好きになりました。
田舎出身の僕には、都会の風景や状況は、この本に出てくる感じなのかな
と思っていました。
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珈琲とうどん 女性
学生時代は夏といえば長い夏休み。夏休みといえば旅ですね。
暑いときに 暑さを堪能するのは夏の醍醐味です。
うだるような暑さのなか、クーラーをつけずに扇風機を回して、
冷えたアイスコーヒーでも飲みながら読みたいのが、椎名誠さんの
『インドでわしも考えた』。シーナさんが素直に驚いたインド体験を、
高校生のときに面白おかしく読んで以来、憧れの旅先でした。
念願かなって、のちにインド体験したときは、もわっとした暑さと
慣れない食べもののおかげで体調を崩し、ただひたすら気持ちが
わるかった印象 が強いので、いつか再訪したいです。
沢木耕太郎さんの『深夜特急 インド、ネパール編』や
藤原新也 『印度放浪』と読み比べも。