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2015年10月25日Part0(予告編)「なにが君のしあわせ?〜いま、承認問題を蒸し返す」

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「何が君の幸せ?今、承認問題を蒸し返す」予告編

※再生できない場合は、個別ページTBSラジオクラウドにてお聞きください。
※最新エピソードはユーザー登録なしでお聴きいただけます。

出演予定:鈴木謙介(charlie)、杉田俊介、速水健朗、西森路代、海猫沢めろん、塚越健司、斎藤哲也ほか

予告編の出演:鈴木謙介、速水健朗、海猫沢めろん、西森路代、宮崎智之、長谷川裕P(黒幕)

10月25日(日) 深夜25:00~28:00 (=月曜1:00~4:00)

ラジコではインターネットで放送同様、音楽も聴けます。

Ustreamによる動画生中継も行います⇒ http://ustre.am/lrQf

※ツイキャスでも中継します→ http://twitcasting.tv/life954


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charlieです


この番組が始まった頃、まだ「論壇」と呼ばれる場所がイメージしやすかった時代に、ある論考が掲載されました。赤木智弘氏による「「丸山眞男」をひっぱたきたい――31歳、フリーター。希望は、戦争。」という『論座』2007年1月号の記事です。この問題提起をきっかけに、いわゆる「ロスジェネ(ロストジェネレーション)論壇」という、当時30歳前後の書き手を中心とした論争の輪が広がっていきました。この番組でも、2007年1月の「失われた10年〜ロストジェネレーション?」の回をはじめ、この論争をきっかけにした放送を、何度か組んだことがありました。

このテーマじたい、色々と振り返らなければならないことがあるのですが、興味深いのは、ここで論点となっていたことのひとつが「承認」だったということです。赤木氏の「格差によって希望を奪われた世代が、もはや戦争を望むしかなくなる」という訴えに対する反論と応答の中で、彼が「戦争ではなく革命を、というが、それはそもそも革命を起こせば自分たちの主張が受け入れられるという前提に立っている」と述べていたのも象徴的でした。2008年6月の秋葉原連続殺傷事件の際にも、犯人の男性に対する「格差社会の産んだ承認不足」の問題がクローズアップされていました。

それらの論点が振り返って意味のあるものだったかどうかはともかく、2015年の現在から眺めると、「格差社会においては、資源の再分配だけでなく、承認の問題に対処する必要があるのだ」という理念は、どこか遠いものにも感じられます。たとえばSEALDsの活動。彼らが目指しているのは安全保障関連の問題に対する政府批判と法律の廃案だったわけですから、格差か承認かという論点はそもそも無関係なのですが、それを差し引いても「承認」を論点にする理由がなさそうに見える。彼らが批判する政府にしたって、アベノミクス以後、雇用対策が行われなかったわけではないけれど、金融緩和・円安誘導・物価上昇による経済成長がもたらすトリクル・ダウンが、デフレ下で生じた問題を解消するというスタンスのほうが目立ったように思います。

おそらくは、00年代末のロスジェネから秋葉原事件を経ての非モテ論壇あたりにまで存在していた「格差+承認」というテーマが、10年代に入って転回したのだと思います。そういえば、政治運動を目指してピースボートに乗り込んだ若者たちが、下船する頃には友だちができて「冷却」されるというプロセスを描いた、古市憲寿氏の『希望難民ご一行様』が出版されたのが2010年でした。

政治運動とか言っても、社会的に排除されることによる承認の欠如が主たる問題なのであれば、友達や恋人や家族ができればいずれ「冷めて」しまう。もしかすると現代においては、承認は格差の問題とは切り離れた「個人的なできごと」として扱われるようになったのかもしれません。

僕自身は、そもそもロスジェネ論争の頃から「承認が問題であることは間違いないが、それは戦後型核家族への回帰ではなく、そうしたタイプの承認から排除された世代が横に連携し、別種のコミュニティをつくることで解消されるべきものだ」と主張してきたつもりなので、この転回は歓迎すべきことなのだと思います。実際、まちなかバルのような都市部の流動的な出会いの場から生まれる「疑似ジモト感覚」の得られる居場所を手に入れた人もいます。あるいは若手社員に対して、できる限り彼らを承認し、会社の近所に住まわせ、ときには朝食まで振る舞いながら、家族主義的なマネジメントを目指す企業が登場しています。

別の傾向としては、最近の女性向け自己啓発本における「プリンセス志向」というか、「わたしの中に眠るわたしの可能性を含めて、自分自身を愛することがすべての運命を変える」といったメッセージには、そもそも承認は自分の中で調達するべきものだという価値が見て取れます。そこまで積極的でなくても、趣味の世界に軸足を置いて、自分が好きなアイドルや俳優を追いかけていれば幸せ、という人もいそうです。背後にあるのは経済的な余裕ですから、「経済成長して資源が分配されるようになれば、承認の問題は個々人が自分の好みに従って解消する」という経済学的な見方が当てはまっていたということなのでしょう。

承認をめぐる幸せ・不幸せは個々人の問題。だから、カネの話だけ手当すればあとは放置でOK、というのもひとつのリアリズムです。他方で僕は、ある時代のある世代が築こうとしたネットワークや価値観が「貧乏な世代の特殊な生存戦略」という形で上下の世代から切り離されることに一抹の寂しさも感じますし、なにより、経済成長の果実は不均等にしか配分されない以上、このシステムでは常に、再分配からも承認からも排除される層が出ることに危機感をおぼえます。ここいらでもう一度、「承認」をめぐる「しあわせのかたち」について話してみる必要があるのかも、と思いました。

というわけで2015年10月のLifeのテーマは「なにが君のしあわせ? 〜いま、承認問題を蒸し返す」です。承認という大きなテーマに対して、「そもそも何があれば幸せなんだろう?」というアプローチで考えられたら、というのが今回の趣旨。リスナーの皆様からも、「あなたがいま、幸せを感じるのはどんなときですか?」というテーマでメールを募集します。風呂あがりのビールが最高、といっても、人によって最高である理由も違いますから、なぜそれが幸せなのか、という理由まで教えてもらえると助かります。
メールアドレスは life@tbs.co.jp

メールはぜひお早めにお願いします!

※参考URL
・今月のスポンサー(!)NECの「WISDOM」
 鈴木謙介氏~ウェブ社会を生き抜くコミュニケーション能力とは?~
 (前編)https://goo.gl/ku12o4
 (後編)https://goo.gl/rzHcy4
 
・ゲンロン 鈴木謙介×東浩紀「1995/2015――いま人文知は必要か」
 http://goo.gl/QXMd7u





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