次回のLifeは
「ふぞろいのグローバル化」
2月27日(日)深夜25:30~
=====
速水健朗です。
「ガラパゴス化」がいろいろな領域で話題に上っています。
主には、日本人(もしくは製品、サービス、プロットフォームなど)が
閉じこもっていてやっていける時代ではなくないので、外に向かうべき
だという主張です。
でも、ちょっと前までは、日本の閉じた環境で先鋭化した文化は、
むしろ世界に通用するといわれていたはず。
ゲームやアニメなんかが「クールジャパン」として世界に評価された
というのは、まさにそれでした。
何が変わったのか。確かにいろいろ変わりました。
例えば、K-POP勢の台頭によって、街やテレビで耳にする音楽は、
あっという間に少女時代やKARAらに変わりました。
洋楽を聴かなくなったという議論がある一方で、K-POPは確実に
聴かれるようになってます。
僕が購読している流通業界の専門紙では、毎日、対中国人観光客、
対中国市場をターゲットにしたビジネスの記事が年々増えています。
いま、銀座やお台場が日々賑わっているのは、中国を中心とする観光客
の増加によるものです。中国人の観光客が増えたのは、2007年以降の
ことです。
自分たちが文化コンテンツを供給する相手だったはずの国が、
いつの間にか逆に発信する国になり、自分たちが観光に行く先だった国が、
観光でやって来る側の国になった。これらの変化は、まさにここ4、5年の
ものです。グローバリゼーションという言葉や、それに伴う社会の変化には、
僕たち日本人も90年代から気がついていましたが、こうして目に見えて
変わっていく状況に身を置くのは、初めてかもしれません。
今回のLifeのテーマ、"ふぞろいなグローバル化"は、こういった状況を
ふまえたものです。
ここからは、僕がライターとして気がついたグローバル化について書きます。
まずは、去年取材したギャルの世界のグローバル化について。
ギャルの読者モデルの世界では、フィリピンと日本のハーフの読者モデルが
たくさん活躍しています。外から見ていただけではまったく気がつきませんでした。
彼女たちの多くは、かつてじゃぱゆきさんと呼ばれたフィリピン人の2世です。
それと、昨年末から脚本家の佐藤大さん、「工場萌え」の大山顕さんと団地を
テーマにしたイベントを始めました。これを機に、東京近郊の団地を取材したり、
関連情報を集めたりしていますが、いま、東京近郊の公共住宅はブラジル人、
インド人、中国人といった人々が増えている多国籍な場所になっています。
労働力としての外国人が大量に日本に来たのは80年代~90年代のことで、
現在は、むしろ生産拠点の東南アジアへの移転、不況に伴う国内の雇用不足
によって、その多くは、すでに日本から離れていきました。
とはいえ、僕が取材で気づいた上のような状況は、日本で生まれ育ち、日本に
定着しつつある2世以降の問題として、表面化している一部と言えるでしょう。
最近、国勢調査の結果が出ましたが、日本は5年前から人口減少局面に入って
いるにもかかわらず、人口は若干増えてます。これは、外国人の登録者が増えた
からのようです。これらも、今までは触れられることのなかったグローバル化の
局面のように思います。
Lifeで「グローバル化」を取り上げるのだから、
「グローバル化時代だから日本人はこう変わらなければいけない」という単純な
モードだけではない、また別のグローバル化の在り方についても、考えられたら
と思っています。
こうした新しく生まれるグローバル状況は、ポップカルチャーの中に反映されつつ
あるように思います。例えば予告編でも取り上げましたが、『臨死!江古田ちゃん』
には、主人公(日本人)の職場の同僚としてフィリピン人の「リンダ」というキャラクター
が登場します。今夏公開される富田克也監督(『国道20号線』)の最新作『サウダーヂ』
は、山梨のブラジル人団地のコミュニティーがモチーフだと聞きました。
これらのようにポップカルチャーの中で描かれる「ちょっとしたグローバル化」は、
実はこれから我々が向き合う社会の在り方を、ちょっとだけ先取りしているのでは
ないでしょうか。そんな、「ちょっとしたグローバル化」の発見、それを描く作品など
についても、メールいただけたらうれしいです。
あて先は、life@tbs.co.jp
メールはぜひお早めに!