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現代の三四郎?据え膳食わずのBLOCKBUSTER清田隆之さん
・年上の女性(ひと)
・リスナーの告白報告、結果は?
・野獣!斎藤哲也
・彼女の望んでいたことは?
・猛獣!斎藤哲也
・恋愛ネオリベ宣言
・紳士ぶって失敗したケース
参考資料↓
「それから」さんのラジオネームは夏目漱石の『それから』から取ったんだと思いますが、文化系青年の悩みなんざたいていのことは100年も前に夏目漱石が書いているような気がしますねえ。清田隆之さんの話を聞いて思い出したのは『三四郎』。「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」ってキツイな~(黒幕はせがわ)
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三四郎はこんなことを言って、あらかじめ、敷いてある敷布(シート)の余っている端(はじ)を女の寝ている方へ向けてぐるぐる巻きだした。そうして蒲団のまん中に白い長い仕切りをこしらえた。女は向こうへ寝返りを打った。三四郎は西洋手拭を広げて、これを自分の領分に二枚続きに長く敷いて、その上に細長く寝た。その晩は三四郎の手も足もこの幅の狭い西洋手拭の外には一寸も出なかった。女は一言(ひとこと)も口をきかなかった。女も壁を向いたままじっとして動かなかった。
夜はようよう明けた。顔を洗って膳(ぜん)に向かった時、女はにこりと笑って、「ゆうべは蚤は出ませんでしたか」と聞いた。三四郎は「ええ、ありがとう、おかげさまで」というようなことをまじめに答えながら、下を向いて、お猪口(ちょく)の葡萄豆(ぶどうまめ)をしきりに突っつきだした。
勘定(かんじょう)をして宿を出て、停車場(ステーション)へ着いた時、女ははじめて関西線で四日市(よっかいち)の方へ行くのだということを三四郎に話した。三四郎の汽車はまもなく来た。時間のつごうで女は少し待ち合わせることとなった。改札場のきわまで送って来た女は、
「いろいろごやっかいになりまして、......ではごきげんよう」と丁寧にお辞儀をした。三四郎は鞄と傘を片手に持ったまま、あいた手で例の古帽子を取って、ただ一言、「さよなら」と言った。女はその顔をじっとながめていた、が、やがておちついた調子で、「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」と言って、にやりと笑った。三四郎はプラットフォームの上へはじき出されたような心持ちがした。車の中へはいったら両方の耳がいっそうほてりだした。しばらくはじっと小さくなっていた。やがて車掌の鳴らす口笛が長い列車の果から果まで響き渡った。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/794_14946.html
青空文庫 『三四郎』より